ReCODEプロトコルへの批判 (専門的)

「宗教と科学の違いは、科学では初めの期待に反した結果が出たときに、それを 受け止めることが出来るかどうかにある」 湯川秀樹

ReCODEプロトコル(MENDプログラム)への批判を片っ端から集めてみた。

ReCODEプロトコルへの批判

・ケーススタディとしては少しばかり有望だが、臨床研究の専門家からすれば、さらなる研究が必要かどうかの判断するための記述が少なすぎる。

・制度審査委員会IRBに承認されているのかどうかわからない。ケーススタディであっても、IRBの承認は必要だが、おそらくされていない。

・このプログラムが今度検討に値するかどうか、わからない。論文が誇大宣伝となっているかどうかも確かではない。IRBが承認したプロトコルを取得して、臨床試験を行うべきである。

・パーソナライズ治療には(N=1)一例の被験者から引っ張り出されたものが多数含まれている。

・プラセボ郡よりも優れているかどうかを判断する研究は不可能に思える。

・被験者がプログラムに完全に従わない場合、どう評価すべきか定まらない。

・ミューズ研究所によると、このアルツハイマー治療法は研究所のコンピュータープログラムにも基づいてパーソナライズする必要がある。しかし、そのリストは個々の運動、8時間の睡眠、食事管理など十分なエビデンスに欠けた疑わしいものばかりに基づいて構成されている。

・事例報告であり、個々の患者にどういった処方が具体的になされたのか正確に把握することは不可能に近い。

・MENDプログラムがシステムアプローチなどと表現されるのは大げさすぎる。もしそれがシステムアプローチだと呼べるとしても、我々は、その中身の詳細を評価する手段をもっていない。

・ミューズ研究所が取り上げている臨床マーカーのは多くは、疫学的な推測のもとに暫定的にアルツハイマー病と関連があるとされているものであって、因果関係があるのか相関関係にすぎないのかをミューズ研究所が特定しないままそれらの臨床マーカーを使っている。

・MRIを使って海馬容積の定量的なデータを得ることは簡単ではないが、彼らははどうやってそれを得たのか。そのことを知ることができない。

・FDG-PETスキャン計測の問題点をミューズ研究所が理解していないと思われる。

・症例報告10例の患者がどのような基準で選択されたかがわからない。症例報告であっても患者がどのように選択されたかを知ることは非常に重要である。

・ブレデセン博士が定義するアルツハイマー病のタイプ3(毒性)は何を根拠に基づいているのか。毒性概念が曖昧

・ブレデセン博士は現在、MusesLabsから離れているが、当時所属していたMusesLabsとの利益相反を開示していない。COI

・プレシジョン医学 パーソナライズドメディシン自体が良い成果をあげることについてはまだ強い説得力がない。

自己批判(克服すべき課題点)

・シルバーバレット リサーチ マインドセット

「問題解決のためには確実な方法しか使ってはならない」というイデオロギー

・すべての事例において独立審査委員会が欠けている。

・比較対照試験の不足

・調査費用が莫大かかってしまう。

・12ヶ月で100時間の取り組み時間が必要

・多くの人にとっては非常に高価なプログラム費用

雑感

実験には二つの結果がある。もし結果が仮説を確認したなら、君は何かを計測したことになる。もし結果が仮説に反していたら、君は何かを発見したことになる。 

エンリコ・フェルミ

・個々のエビデンスの不足に関しては、単一的な切り取り方で計測されたエビデンスという前提に問題がある、(とおそらくブレデセン博士も考えているので、)これは批判されてもしょうがない。アルハカが勝手に弁解するなら、個々のエビデンスが不足していることは事実だが、そのことが組み合わせた場合のエビデンスの不足につながることを意味しない、となるだろう。これについては、挨拶文でも書いたが、そもそも争う土俵が違うため、個々の指摘はごもっともなのだが、少なくとも内在的な批判にはなっていないのではないか?と思っている。

・情報開示がそれほどなされていないというのは、素直に見れば、まだ今なお試行錯誤をしている段階で、詳細なプロセスが固まっているわけではないから、開示できない部分もあるのかなあと思った。ビジネス的に捉えれば、結局製薬会社のように薬の特許をとって利益を出すような経営モデルを作ることができないので、その収益の源となるアルゴリズムを開示してしまうとことはできないだろうなあ、と想像したりもした。

・よく、因果関係と相関関係を区別せよといって、二つの区別がつきやすい例ばかり持ち出されるが、複雑系ではそれらが入り組んでいることが多い、A→Bだったのものが、繰り返されてA↔Bという水平的因果関係に持ちこまれることも非常によくある。(卵が先か鶏が先か)

・因果関係の特定というのは結構難しかったりする。例えばだがアルミニウムとアルツハイマーの関係性は、因果関係どころか相関関係でさえ確定していない。(用量反応関係性が認められていない。)しかしだからといってアルミニウムを経口摂取しないよう努力することがバカげているといるだろうか? これがアルツハイマーの発症を防ぐため、または悪化を防ぐためにアルミニウムを摂取しない努力だけしかしないなら、たしかにバカげている。しかし、例えばだが、そのことがそれほどコストがかからずに、20や30ある改善策のひとつとして組み込めれるなら、むしろ保険的に入れておけばいい、という話しになりはしないだろうか。(結局、リスクの大きさに対してコストや手間暇を比較する問題にもなってくる。)

・技術的な問題は正直わからなかった。こういうのはもっと多くの専門家に判断してもらいたいなと思う。

・完全に憶測だけど、事例報告で集められた患者はミューズ研究所が、やはり恣意的に選んでいるようには思える。ひとつはどういった効果があるかを検討するために、患者の症状や年齢などにバリエーションを持たせているということと、プログラムを実行してくれそうな真面目な患者、プログラムの重要性を理解できている患者の選考ぐらいはしているだろう。症例の被験者が元々医者だったとか、弁護士だったとか学歴が全体的に高かった印象がある。こういった特殊なプログラムをオンラインで見つけて、参加する意志をかためる患者側のバイアスもあるだろうと思う。

・利益相反の問題はたしかにあると思う。注意して見ていく問題だろう。そこだけで決めつけるのではなく、彼らのやっていること全体を見ていき、最後は自分で判断していくしかない。

・精密医学、オーダーメイド医療もまだ始まったばかりで証拠が出揃ったわけでもないが、時代の流れとしてはこれから推移していくのだと思う。ただオーダーメイド医療実行の複雑さ煩雑さを除けば、それが有効ではないという説得力のある意見もまた目にしたことはない。

・MusesLabsも先走りしている印象はある。従来の臨床研究が難しいため、治療プログラムの推進とデータ収集を同時に行っているのだろうと推測される。一般的な研究手法としてはアウトだろうが、治療プログラム全体が一般的な健康法とサプリメントで構成されているため、それでも可能と見たのかもしれない。逆に言えば、下手に医薬などを用いるとプログラム推進と臨床研究の同時並行が難しくなると考えて、副作用が強く出るかもしれない医療行為に相当するものを、あえて加えなかったのかなあとも想像してみた。こうして考えてみると、医薬を使用しないというのは思想ではなく(と最初は勝手に思っていた)推進していくための戦略的な考えに基づいているのかもしれない。

また何かあれば追加していく予定でいる。

まとめ

・専門家でさえも、まだどう評価していいか困っているようなところがある。本来ならケーススタディを元に従来の医学的手法からいえば独創的すぎて相手にされてなかったかもしれないが、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)が関わっており、ブレデセン博士自身も、評価の高い研究者として知られているため、他の専門家も簡単には無視できない、様子見しているという空気を感じる。

・可能性を認めつつも、(現状の)実証手法にはいくつか客観性に問題ありというのが、従来の医療推進派からみた時の全体的な印象。

ただその実証手法の問題点には、

・単純なミューズ研究所の不手際、

・ビジネス的な裏事情、

・MENDプログラムが、”原理的に”従来のエビデンスに基づく評価手法になじまない

という3つの問題があるように思う。

大きな課題となってくるのは後者の側かもしれない。

付け加えておくと、「単剤療法でうまくいかないから、多面的な治療を試そう」という考え方自体への納得できる批判も存在しない。

http://scienceblogs.com/insolence/2016/06/24/the-mend-protocol-for-alzheimers-disease-functional-medicine-on-steroids-revisited/

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