CIRS(慢性炎症反応症候群)その1 概要
CIRS = Chronic Inflammatory Response Syndrome
「知識は力である」 Dr.Shoemaker
※この記事を読む前に免責事項をお読みください。
記事目次
CIRS概略
遺伝的に脆弱な人が、生物毒性によって感染することによって、慢性的に(全身的に)炎症が起こる病気、健康問題の総称。
全身性炎症反応症候群(SIRS)の一種とも言えるが、病因のメカニズムは異なる。
特定の毒物による疾患名ではなく、Dr. Ritchie Shoemakerによって造られた用語、そしてそれに基づく診断や治療を含む。
現在、CIRSという広義の概念は、認知症の専門家を含め一般的にまだ認知されていない。
メカニズム
通常、人がカビや真菌などの生物毒に曝露すると一時的に病気になるが、免疫システムが働くまたは毒素が取り除かれることで回復する。
しかし一部のHLA遺伝子に問題がある人たちは、特定の毒素を認識することができないため、生物毒素は体内に残り、炎症反応を引き起こし続け慢性化する。
生物毒素のリスト
・真菌
・バクテリア(おそらくボレリア、バベシア、およびダニ刺咬によって伝播する他の生物を含む)
・放線菌(糸状体および棒状細菌からグラム陽性菌放線菌目)
・マイコバクテリア
・カビ
・カビ胞子
・エンドトキシン(別名リポポリサッカライド、またはLPS、グラム陰性細菌の細胞壁成分)
・インフルエンザジェン(炎症および浮腫を引き起こす刺激物)
・β-グルカン(ポリサッカライド)
・溶血素(細胞を破壊することができる細菌によって産生される外毒素)
・微生物揮発性有機化合物
感染リスク
シューメーカー博士によると、世界人口の25%は、HLA遺伝子のうちの一つに変異を持っており、以下の2つの条件が重なることでCIRSを発症する可能性が高まると述べている。
・ 生物毒素への曝露(大量、長期間)
・ 毒素暴露に先立って、すでに炎症を起こしている
(重篤な上気道感染、ライム病などの免疫系を刺激する因子)
人口の2%は、生物毒素に曝露後、多系統、多症状の疾患を発症しやすい遺伝子をもっていると、シューマーカー博士は推定している。
CIRSの原因
水害を受けた建物(主にビル建築)に住むことによってマイコトキシンへ曝露することが最も一般的な理由。
http://www.vk1call.com/property-damage-restoration/mold/
※マイコトキシンとは、カビの二次代謝物として産生される毒の総称、300種類以上ある。
近代建築の密閉された通気性のない環境で、感性リスクが飛躍的にリスクが高まる。
一度水害を受けるとカビは24~48時間で成長する。
(米国の)建物の水害はかなり一般的で、資料によると調査した建築物の43%に水害があり、85%が過去に水害歴があったとされている。
屋内湿度が50~60%を超える建物でも、発生する可能性がある。
マイコトキシンのみならず、他のダニ媒介病原体、アクアトキシンもCIRSを引きおこす可能性がある。
CIRSとアルツハイマーの関連性
アルツハイマー真菌仮説
アルツハイマー病患者全員が、異なる脳部位領域において真菌感染
http://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/10270
https://www.nature.com/articles/srep15015(英語)
http://www.afpbb.com/articles/-/3063366
研究者5人からなるチームは、分析対象としたアルツハイマー病患者11人の遺体の全てで、脳組織と脳血管に「数種類の真菌種」の細胞や関連物質を発見した。
これらは、アルツハイマー病にかかっていない対照群にはみられなかった。
アルツハイマー病の「主病因」はこれまで、粘着性タンパク質の蓄積によって形成される脳の「アミロイド斑(プラーク)」とされてきたが、プラークを標的とする薬剤の試験は、期待はずれの結果に終わっている。
数種類の真菌の痕跡が発見されたことで「アルツハイマー病の臨床症状の進行と重症度が患者によって異なることを説明できるかもしれない」と研究チームは述べている。
また真菌の原因は、病気の進行がゆっくりであることや炎症反応がみられることなどの、アルツハイマー病の特徴とぴたりと符合すると研究チームは補足した。
炎症は、真菌類などの感染性病原体に対する免疫反応の一つだ。
CIRSはアルツハイマー病1~3型すべてに影響を及ぼす可能性がある。
認知機能の低下のないCIRSの症例も多い。
また逆にCIRSのない3型アルツハイマーも存在する。
デール・E・ブレデセン
3型アルツハイマー病の患者では、バイオ毒素感受性、HLA-DR/DQハプロタイプの異常がよく見つかる。
デール・E・ブレデセン
CIRS 生物毒素 代謝経路
http://biotoxinwars.blogspot.jp/p/biotoxin-illness.html
ステージ1 生物毒性
生物毒素に人が曝露すると、通常は免疫システムによって抗原認識され、肝臓で解毒され血中から取り除かれる。
しかし、HLA-DRハプロタイプの変異体を持っていると、生物毒素を抗原として同定することが難しくなる。
生物毒素は身体によって認識されないため、いつまでも体内を循環する。
↓
生物毒素は、体内のあらゆる細胞の表面受容体(Toll受容体など)に結合する。この結合によって、サイトカイン、補体の分裂による生成物、TGF-β1産生、複数の炎症経路の継続的なアップレギュレーションを引きおこす。
生物毒素はまた、神経細胞機能にも直接影響をおよぼすため、視覚コントラストが低下する。
ステージ2 サイトカインへの影響
サイトカインは受容体に結合し、血液中のMMP9放出を引きおこす。放出されたサイトカインは脳内でレプチン受容体と結合し、視床下部の機能低下を引きおこす。
↓
阻害されたレプチン受容体は、MSH(メラニン細胞刺激ホルモン)を産生しなくなる。
毒素によって上昇したサイトカインは、頭痛、筋肉痛、不規則な体温、集中力の低下など、多くの異なる症状を引きおこす可能性がある。これらはMSH低下による影響である。
MSH = melanocyte stimulating hormone(メラニン細胞刺激ホルモン)
ステージ3 VEGFが減少
サイトカインの上昇が毛細血管において、白血球を引きつけ、血流が制限され、組織中の酸素が低下する。(capillary hypoperfusion 毛細血管の血流低下)
VEGFの減少により、疲労、筋肉痙攣、息切れを招く。
ステージ4 免疫システムへの影響
免疫作用と関係する特定のHLA遺伝子をもつ患者は、グリアジン(グルテン感受性)、アクチン、アンカ(潰瘍性大腸炎の可能性)、カルジオリピン(血液凝固に影響を及ぼす)などへの免疫応答を引き起こし、疾患を発症する可能性がある。
最悪の被害は、補体系が慢性的に活性化され、高レベルのC4aを生じることにある。
ステージ5 低MSH
MSH産生が減少すると、メラトニン産生も減少し、睡眠障害を引きおこす。エンドルフィン産生も抑制され、慢性的な痛みや、一般的ではない痛みを引きおこす。
ステージ6 抗生物質耐性菌
MSHの減少によって、粘膜上のバイオフィルムに耐性のあるMARCoNS(複数抗生物質耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)の繁殖が可能になる。これらの細菌によってもMSHが低下するため、悪循環が続くことになる。
ステージ7 下垂体ホルモンへの影響
減少したMSHは、喉の渇き、頻尿、神経媒介性低血圧、低血液量、ADH(バソプレッシン)の下垂体産生の減少(静電気ショックにつながる)を起こすことがある。
性ホルモン産生はダウンレギュレートされるが、下垂体は、初期段階でコルチゾール、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)産生をアップレギュレートし、その後、異常に低い数値に低下したり、正常範囲であっても低い範囲にとどまったりする。
CIRSの因子
http://howirecovered.com/mold-toxicity/
SOCS3 サイトカインシグナル抑制因子3
Suppressor of cytokine signaling 3
https://en.wikipedia.org/wiki/SOCS3
SOCS3の上昇がCIRSと関連している可能性
直接経路
カビなどに含まれるマイコバクテリアは、直接SOCS3を刺激する。
間接経路
炎症性サイトカイン(IL-6、IL-10、IFN-γ)のカスケードによる増強が始まると、体はSOCS3を産生して、この応答を抑制しようとする。
そのため、毒素への曝露 → 炎症性サイトカインの増強 → SOCS3の増加
という間接的に増強させる経路が考えられる。
SOCS3が低下するその他の原因
Sirt1不活性 → 視床下部のSOCS3を減少 → レプチン抵抗性低下
SOCS3が引きおこす問題
レプチン抵抗性、肥満、耐糖能異常を引き起こす。
レプチン抵抗性増加 → MSH低下
・MARCoNS (多重抗生物質耐性コアグラーゼ陰性菌)
(Multiple Antibiotic Resistant Coagulase Negative Staph)
コレスチラミンで治療して一ヶ月が経過しても良くならず、MSHレベルが低い場合は、MARCoNSを疑う。
http://www.herbaltransitions.com/MARCoNS.html
参考動画
サンディープ・グプタ博士 インタビュー(英語)
カビ毒テスト、毒素曝露 ジル・カーナハン医師による解説(英語)
CIRS リッチー・シューメーカー博士 インタビュー(英語)
セルフハック リッチー・シューメーカー博士 スカイプカンバセーション(英語)
参考サイト
http://www.survivingmold.com/community/two-new-papers-alternate-means-to-make-a-cirs-diagnosis-and-peds-vcs-norms
Chronic Inflammatory Response Syndrome – Surviving Mold
www.survivingmold.com/docs/Berndtson_essay_2_CIRS.pdf
https://selfhacked.com/2015/09/02/the-root-causes-of-mold-problems-msh-sirt1-socs3-and-hypoxia/#Hypoxia_and_Mold_Illness
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4789584/
https://chriskresser.com/5-things-you-should-know-about-toxic-mold-illness/
http://biotoxinwars.blogspot.jp/p/biotoxin-illness.html