アルツハイマー病 萎縮する脳部位とその働き(覚書)

アルツハイマー病 萎縮する脳領域と機能

免責事項を先にお読みください。

アルツハイマー病の進行に伴い萎縮、機能低下する脳部位についての覚書。

前脳基底部 / Basal Forebrain

「前脳基底部 ch1」の画像検索結果

線条体の前の下に位置する脳部位で、側坐核、基底核、ブローカ対角帯、マイネルト基底核、内側中隔核を含む、アセチルコリンの産生に重要な脳部位である。

Ch1 内側中隔核 海馬へ投射

Ch2 ブローカ対角帯 背側部 海馬へ投射

Ch3 ブローカ対角帯 腹側部 嗅結節へ投射

Ch4 マイネルト基底核 新皮質、扁桃体へのコリン供給

Ch1とCh2の量は認識記憶精度と正の相関、θ波を発生させ海馬へ投射

Ch1~Ch3の体積喪失は、海馬体積の低下と関連

Ch4のコリン作動性の枯渇が、アルツハイマー病前駆段階に寄与しうる。

kanri.nkdesk.com/hifuka/sinkei32.phphttps://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%89%8D%E8%84%B3%E5%9F%BA%E5%BA%95%E9%83%A8

academic.oup.com/cercor/article/doi/10.1093/cercor/bhw195/3056414/Volume-Loss-of-the-Nucleus-Basalis-of-Meynert-is

bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%81%A5%E5%BF%98%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4

マイネルト基底核  Nucleus Basalis of Meynert(NBM)

「マイネルト基底核」の画像検索結果

www.akira3132.info/basal_ganglia.html

新皮質へ広く投射するコリン作動性ニューロン群

「中隔と海馬を結ぶアセチルコリン神経細胞は場所の認識に関わる記憶に重要な役割を持ち、マイネルト基底核と大脳皮質を結ぶアセチルコリン神経細胞は物体自身の認識に関わる記憶に必須」

90%がコリン作動性ニューロン

変性によりアセチルコリン産生が低下する。

マイネルト基底核の細胞喪失原因はアルツハイマーでは神経原線維変化による(ADを伴うレビー小体ではαシヌクレインの関与が考えられる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4366544/

青斑核 Locus Ceruleus(LC)

「青斑核」の画像検索結果

indeep.jp/revealed-ground-zero-of-alzheimer-disease-begins/

覚醒、注意、ストレスとパニックに対する生理学的反応に複雑に関与

脳内で合成されるノルアドレナリン(ノルエピネフリン)の主要部位

青斑核細胞から分泌されるノルアドレリンが、多くのニューロンを活性化させ、脳内の神経炎症を抑制する。

青斑核によるアルツハイマー病発症寄与仮説

青斑核が変性し、ノルアドレナリンの分泌が減少する。

ミクログリア細胞(小膠細胞)が炎症を起こす。

ミクログリア細胞の食作用が低下し、アミロイドβの排出が低下する。

アミロイドβが沈着、炎症が他の脳の部位へ広がる。

www.pnas.org/content/107/13/6058

ADマウスでは、青斑核を破壊するとアルツハイマー病の進行が加速する。

www.jneurosci.org/content/26/5/1343

青斑核の変性が、直接的な主要病因ではないにしても、アルツハイマー病が治癒しない不可逆ポイントに強く関連しているかもしれない。

LC-NA系

青斑核と、青斑核(LC)から産生されるノルアドレナリン(NA)が影響を及ぼす領域はLC-NA系と呼ばれる。

※ノルアドレナリンは副腎髄質から血中に放出されることもある。

「lc-na system」の画像検索結果

青斑核がノルエピネフリンを投射する部位

扁桃体、海馬、脳幹、脊髄、小脳、大脳皮質、視床下部、テクトウム、視床、腹側被蓋領域

ノルアドレナリン性ニューロンは2種類あり、恐怖学習と記憶の消去学習という、まったく反対の性質をもつ活動によってバランスをとっている。

両方のニューロンが各脳部位に投射されているが、扁桃体と前頭前皮質への投射には特異性がある。

LC-NA系と関連する機能

覚醒および睡眠 – 覚醒サイクル、注意と記憶、行動の柔軟性、行動抑制およびストレス(心理的)、認知制御、感情、神経可塑性、姿勢とバランス

アルツハイマー病では青斑核ニューロンの70~80%が失われている。

嗅内皮質(嗅内野) / Entorhinal Cortex(EC)

「Entorhinal Cortex」の画像検索結果

・海馬と新皮質のゲートウェイ

・嗅覚の溝に囲まれているため嗅内野と呼ばれるようになった。

※嗅覚と直接は関係しないが、嗅覚の一部は嗅球→嗅皮質の経路を通る。

・嗅内皮質は6層に分かれる、1~4層のニューロンは比較的少ない。

・皮質からは2層と3層へ入力。

2層のニューロンは主に歯状回と海馬CA3領域につながっていて、3層の細胞はCA1と海馬体の軸索に分布している。

・嗅内野の特に2層で神経原線維変化と呼ばれる病変が見られる。

早期のBDNF治療は、マウスの嗅内皮質における細胞死を改善する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3782628/

BDNF/TrkBなどのシグナル伝達経路の標的が、損失シナプスの回復を促進

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3948846/

カルニチンをADマウスへ投与することで、シナプス密度が増加

onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jnr.10443/full

顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)投与により、マウスの海馬、嗅内皮質におけるβアミロイド沈着を減少させ歯状回の神経新生を増強。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19500657

嗅内皮質はアルツハイマー病早期診断の信頼できるバイオマーカー

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3085034/

ヒト脳の剖検では、嗅内皮質のタウの蓄積は他の部位と比べ2倍、一方で帯状回ではアミロイドβ濃度が高い。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4407584/

小まとめ

・BDNFを増やす改善策が非常に重要。

・アセチル・L・カルニチンが有効かも。

・嗅内皮質の脱髄防止策アイディア、アロマ、vielight810の鼻腔バージョン

・アルツハイマー病治療全体に言えることだが、その中でも特に嗅内皮質は初期の段階で障害を食い止めることで、疾患の進展を大きく防いでくれるかもしれない。

(一旦破壊されると、連鎖的に障害を受けていくかも、ダムの堤防決壊を防ぐイメージ)

頭頂葉 / Parietal lobe

楔前部(けつぜんぶ)/ Precuneus

頭頂葉内側の後方に位置する

視空間的な想像やエピソード記憶の再生、自己主体感などの感覚に関わる。

安静時に高い活動を示し、目標志向的な活動のときにはその活動を低下させる。

複雑なネットワーク関連の中で自己意識に関係し作用している。

幸福を強く感じる人ほど

脳の「楔前部」の体積が大きい傾向

「楔前部の体積は瞑想トレーニングで変わる」という研究報告

www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2015/151120_1.html

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24893317

頭頂連合野 / Parietal association area

bsd.neuroinf.jp/wiki/%E9%A0%AD%E9%A0%82%E9%80%A3%E5%90%88%E9%87%8E

・空間認知の障害、ここが障害を受けると物体の距離感がわからなくなったり、道に迷ったり(見当識障害)する。

・運動をする時の情報処理にも関わる。

・アルツハイマー病の進行を予測するのに、楔前部や後部帯状回よりも、こっちの診断が重要という報告あり。

・頭頂連合野は大きく上頭頂小葉と下頭頂小葉の上下二つに分けられる。

上頭頂小葉 / Superior parietal lobule (SPL)

Gray726 superior parietal lobule.png

・空間的な方向性に関与、視覚入力、手からの感覚入力を受け取り、身体や手足の姿勢を認識する。

障害を受けると、自分の手などが目に見えないとどこにあるか分からなくなる。

・上頭頂小葉は頭頂葉の他の機能にも関与している。

・楽器演奏者、ヨガをしている人は、上頭頂小葉が大きいと言われている。

下頭頂小葉 / Inferior parietal lobule(IPL)

Gray726 inferior parietal lobule.png

言語、数学的な計算、身体イメージ、表情から感情を読み取る能力に関与

アインシュタインの脳は下頭頂小葉が異常に大きかったと言われている。

・障害により、失認、書字障害、失読症、計算力の障害、病態失認、対側、半盲、地形的な記憶の喪失、半側感覚無視などが起こる。

角回(かくかい) / angular gyrus

言語、数の処理、空間認識、記憶検索、注意など多くの心理プロセスに関与。

メタファー、隠喩の理解能力 角回の障害により、「彼女は天使だ!」というメタファーを理解できず、「彼女が天使?」と怪訝な顔をして相手から嫌われることになる。

・右角海刺激が幽体離脱の原因である可能性がある。

・意識が明確な作業に従事していないデフォルモードネットワークの状態では、角回が他の領域とともに活性化される。

緑上回(えんじょうかい)supramarginal gyrus

Grey726 supramarginal gyrus.png

・触覚や感覚データの解釈、手足の空間的な位置

・他者の姿勢や身振りを認識する。ミラーニューロンシステムの一部

緑上回は他者への共感においても中心的な役割を果たしているため、緑上回の機能不全は他者の感情を投影して自分が感情的になる能力が阻害されることで、自己中心的な人間性を引き起こす。

・緑上回の障害によって音韻性錯誤を起こすことも知られている。

「つくえ」と言おうとして「くくえ」と言ってしまったりする。

帯状回

前帯状皮質 / Anterior cingulate cortex (ACC)

・エラー検出、争い、競合の監視役

他者への関心、他者への共感、同情

注意力を長時間にわたって維持

社会性や協調性、周囲の人と協調していく

障害を受けると、目の前にいる人へ安定的に関心をもつことができなくなり、目の前にいる人を平然と無視したりする。

ワーキングメモリーに関与

紡錘型細胞(スピンドルニューロン)

「Spindle cells」の画像検索結果

・他の脳部位に比べ前部帯状回には紡錘型細胞が多い。

・紡錘型細胞は霊長類にてはじめてあらわれた独特の形をした細胞群 

・信頼、共感、罪悪感、などの複雑な反応や立案などの実際的な事柄と関わっている。

「紡錘型細胞はあちこちの細胞からなるネットワークが一気に発火し脳全体を円滑に作動させる。そのため、他のありふれたタスクをこなすのと違い、脳全体が活動するため重い負荷がかかる。

・紡錘細胞の不思議

紡錘細胞は感情を処理し、群れや人間関係を調整する働きをもっている。

紡錘細胞は、人間が他者の複雑な感情の状態を知覚すると同時にそれにすばやく反応することを可能にしている。

だからこそ人間は愛情を感じたり、他者の感情を理解できたりするのだ。

www.tokagetarou.com/animal_feeling.html

前帯状皮質 膝下部 / Subgenual Anterior Cingulate Cortex (sACC)

前部帯状回の最下部位

「無償奉仕の精神」という仮説

前帯状皮質 背側部 /Dorsal Anterior Cingulate Cortex (dACC)

他人との駆け引き、長期的な見通しの判断、人の成功を羨む妬みの領域

後帯状皮質 / Posterior Cingulate Cortex (PCC)

posterior cingulate cortex

記憶に関わるパペッツ回路の一部

海馬→脳弓→乳頭体→視床の前核群→帯状回後部→必要な記憶は大脳皮質連合野へ

左に損傷があれば、言語情報を中心とした健忘症候群

右に損傷があれば、地誌的障害(一種の空間認知と記憶の障害)

デフォルトモードネットワークの重要なノードでもある。

遠隔効果説

嗅内皮質の細胞脱落が、後部帯状回の機能低下を及ぼす、という説がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3021534/

www.alzheimersanddementia.com/article/S1552-5260(08)00125-8/fulltext

ヒト成長ホルモン放出ホルモンの類似体を健常者およびMCI患者に用いた治療は、研究されたすべての脳領域においてGABAの増加をもたらし、認知機能の改善を伴った。

後部帯状回のGABAレベルが、アルツハイマー病のバイオマーカーとなる可能性

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5531169/

小まとめ

・後部帯状回の障害によって、言語機能と、健忘の障害が進行の移行期に見られる。

・嗅内皮質障害の波及による後部帯状回の障害は、他の脳部位の障害とは比較的独立しているのかも。

・海馬や嗅内皮質の障害が後部帯状回に波及している可能性がある。

・アミロイドβレベルが高いことによる後部帯状回の障害

・後部帯状回ではGABAの不足が見られる。(GABA増加策?

・ホルモン補充が有効かもしれない。(プレグネノロン)

・DMNを活性する瞑想を取り入れる。(重要 & 低リスク)

前頭葉

前頭葉 内側面 / Medial prefrontal cortex (mPFC)

前頭葉内側面は、文脈や出来事などから行動に移すためのスキーマを作製している可能性が高い。

作られたスキーマによって、過去の経験と照らして合わせて感情や動機的な応答を行う。

数秒以上の記憶には海馬のサポートが必要。

ラットの研究では、前頭葉内側面での記憶の統合プロセスは2週間続く!

海馬のエピソード記憶のトレースが弱まると、前頭葉内側面においての遠隔記憶の負担が徐々に増していく。

短期記憶の検索中には前頭葉内側面-海馬のシータ波が増加する

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3562704/

「Medial prefrontal cortex」の画像検索結果
社会脳の首都

前頭葉内側面は社会脳の基本ネットワークのすべてに関わっている。

1 表情認知

2 駆け引き

3 同情、共感

4 利他性

5 未来の利益予想

6 未来の予定行動の想起

7「現在行っている仕事」と「未来に行う予定」の行動への注意の配分

blogs.yahoo.co.jp/brainandaging/37465530.html

背外側前頭前皮質 dorsolateral prefrontal cortex (dlPFC)

Prefrontal1.png

作業実行機能、ワーキングメモリ、認知活動の柔軟性、計画、抽象的推論、運動の計画

背外側前頭前皮質のすべてが実行機能をもつわけではないが、すべての複雑な精神活動は背外側前頭前皮質とつながった皮質、皮質回路を必要とする。

背外側前頭前皮質は、リスクに関わる意思決定、道徳に関わる意思決定両方に関与する。与えられた資源をどう分配するか自分で決定しなければならない時に背外側前頭前皮質は活性される。

トロッコ問題で切り替えポイントを変えて5人の命を守って1人を犠牲にしようとする時、このdlPFC(前頭前野背外側部)が活性される。

橋から一人を突き落とさない判断をするときは、前頭前野腹内側部(vmPFC)が活性される。

前部前頭前皮質 / Anterior prefrontal cortex(aPFC)

「Anterior prefrontal cortex」の画像検索結果

社会的な情動行動のコントロールに関連する。

感情とルールに従う行動との間の調整。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22000109

側頭葉

側頭葉 上側頭溝周辺

アルツハイマー型認知症患者での血流低下が見られる。

相手の視線、表情を見て相手の気持ちを推測するのに必要

たくさん人がいる中で人間関係を築いていく時に、ガンガン活性化される。

人の輪の中にいて、人間観察 をするだけでも活性!

アリゾナ大学のシャロルアーキン教授の研究によれば

「アルツハイマーになった人こそ、外に出て多くの人と交流するのが進行を抑える鍵を握っている」

と話す。

介護者と患者が病気や日常生活のことばかり話していては良くない。他人と接すれば普通の会話が出てくるので記憶を促したり、認知機能を維持することが出来ることが分かった。

2015.9.8 NHK番組「アルツハイマー病の進行をくい止めろ」より

アルツハイマー病 血流低下が穏やかな脳領域

中心溝周囲皮質 / Central sulcus

Gray726 central sulcus.svg

赤いところが中心溝

ローランドの亀裂とも呼ばれていた。

前壁:各部位へ筋肉を動かすための部位

後壁:感覚情報の入力を受け取る

後頭葉

視覚や色彩の認識、聴覚、障害を受けると本が読めなくなる。

アルツハイマー病患者では読書能力は比較的保たれる。

※クリスティーン・バイデンさんもそうらしいが、うちの母も本はかなり読む。

大脳基底核 / Basal ganglia

脳幹を結びつけている神経核の集まり。

大脳皮質、視床、脳幹などの脳領域を強く相互接続している。

随意運動の制御、手順の学習、歯磨きなどの日常的な行動、眼球運動など習慣的な機能と関連する。(認知機能、感情も含む)

基底核の主要な機能は、自発的な運動をスムーズに行うために、前頭皮質の活動を調節、コントロールする役割をもつ。

パーキンソン病は基底核変性を起こし無道、筋固縮などの運動症状が現れる。

小脳

知覚と運動機能の統合、平衡感覚、随意運動など、アルツハイマー患者では、大脳で失われた精神的な機能を、

小脳が代替している可能性がある!

ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E8%84%B3

橋被蓋

(脳幹にある神経核 大脳基底核と強く相互連絡しあって、学習や報酬などに関与)

メモ書き

ドネペジル投与群では帯状回前部,前頭前野,右側頭・頭頂葉皮質の脳血流がプラセボ投与群よりも有意に保たれる

前頭葉眼窩面や下部前頭葉の血流が低下していて、易怒性,脱抑制や多幸感がみられる患者にはドネペ ジルの効果があるとの報告がある

参考サイト

xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/10321

xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/10306

www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/clinical_practice_geriatrics_49_425.pdf

www.nmp.co.jp/member/datscan/flow/flow02.html

dementia.umin.jp/link4-1.html

minnanotameno.seesaa.net/article/443031334.html

Translate »