アルツハイマー診断直後から行う周辺症状戦略

アルツハイマー 周辺症状(BPSD)長期戦略

My Worst enemy is my MEMORY.

私の最悪の敵は、私の記憶だ。

扁桃体編

ご存知の方も多いと思うが、アルツハイマー病患者は嫌なことだけを覚えがちだ、と言われる。

アルツハイマー病ではない一般の人も、どちらかと言えば苦かった経験、嫌なことなどを覚えているものだ。それは覚えておかないと生命の危険に関わるという進化論的な事情があったためで、これは心理的な植え付けられたものではなく、脳の仕組みとしてそのようになっている。

だから、わたしや世間がネガティブ思考だからといっても別に不思議なことはなく、それが意味することは、あなたが、ご先祖様の傾向を引き継いでいるということにすぎない。

※しかし、だからこそ、日常的に生命の危険にさらされているわけではない現代社会においては、意図的にポジティブ感情を優勢にして、バランスを取る必要があるとは言えるかもしれない。

悪い記憶だけが残る

海馬の障害をもつアルツハイマー病患者の場合、事態はもっと深刻だ。

認知症患者は、扁桃体と海馬の連携がうまく働かないことで、ネガティブ感情がより強烈に残りやすい。

記憶を担う海馬のすぐとなりに扁桃体という神経細胞の集まりがあるのだが、この扁桃体は、感情的な変化に反応する。

その中でも見えない不安や恐怖などに特に反応しやすい。

反対に予測のつく恐怖は扁桃体の恐怖学習が抑制される。

※予測誤差学習の神経回路の仕組みによる。

アルツハイマー病患者の場合、嫌なことや恐怖などを感じた時この扁桃体が反応すると、そのすぐ隣にある機能の衰えた海馬が、一瞬賦活化され、記憶機能が蘇るのだ!

「扁桃体」の画像検索結果

www.actioforma.net/kokikawa/kokikawa/amigdala/amigdala.html

例えて言えば、我々がヤフオクの評価を見る時、ネガティブな評価を見がちなのに対して(自分だけ?)、アルツハイマー病患者の場合そういうレベルではなく、悪い評価しか見えない、のである。orz

そのため、よくあるアルツハイマー病患者の介護で起こるトラブルのひとつに、介護者が親身になって患者の世話をしても、それらは覚えらることなく、介護者がたまーに我慢できず患者にあたってしまうと、患者はそれだけを印象的に覚えてしまい、お世話する介護者に対して悪印象をもってしまうようになる、というのものがある。

悲しいかな、100ポイントの善行を積んでも、ひとつの感情的な行き違いで、すべてが台無しになってしまうかもしれないのだ!

小まとめ 大変だけど、非常に悪い評価ゼロを目指そう

次善策 

ネガティブな感情をぶつけそうになった時は、相手側から予測がつくような形で表現する。

恐怖は静まらない

「fear」の画像検索結果

また、もうひとつ海馬の障害を受けているアルツハイマー病患者には厄介なことがある。

不安や恐怖を感じると、コルチゾールという炎症ホルモンが体内中に分泌される。これは、戦闘or逃避モードとなるノルアドレナリンとも関連しているホルモンで、ストレスがかかる状況では必要な側面もあるのだが、炎症ホルモンでもあるため、闘いやストレスが去った後では早急に低下してくれなければならない。

このコルチゾールを下げるための器官のひとつに、海馬があるのだ。

海馬、前頭前皮質、HPA軸にコルチゾールと結合してネガティブフィードバックを行うグルココルチコイド受容体が多く発現している。

そのためアルツハイマー病患者が恐怖を感じて、一度でもコルチゾールが放出されてしまうと、高コルチゾール状態が続き、いつまでたっても炎症が下がらないという状況に陥ることになる。

そしてそのことがメンタルにも影響を及ぼすため、不安や恐怖もなかなか静まらないということにまでつながってくる。

その結果、アルツハイマー病患者(特に海馬の障害が大きい)は、健常者どころか、うつ病患者よりもはるかに不安や、恐怖、不快感情に弱く、かつその不快感情を選択的に記憶してしまう。

悲しい映画と幸せな映画を観たアルツハイマー病患者は、記憶できないにもかかわらず、感情の情報を報告し続けた。特に悲しみの感情は、大きく上昇が続いた。

journals.lww.com/cogbehavneurol/pages/articleviewer.aspx?year=2014&issue=09000&article=00001&type=abstract

特にアルツハイマー病の診断前では、記憶していないことの瑕疵を責められるため、そのことも症状の悪化につながる一因となる。

また、診断後であっても、介護者にそういった理解がなかったり、知らない人からの指摘などによって、より病状を悪化させてしまうかもしれない。

認知症患者というのは、記憶していないから大丈夫だろうと思われる人もいるかもしれないが、ストレスに対して激弱であるがゆえに感情的な記憶も残りやすいのである。

「hero psycological」の画像検索結果

アルツハイマー病の方で、社会の偏見や差別に向かって、または社会をより良くしようと立ち向かわれている方がいるが、あれは世間の人が想像するよりもはるかに内面的に過酷な行動なのだ。

それはもう

勇者とかヒーローと言っていいレベルだったりする。

これは理屈だけで言っているわけではない。

ISISの人質がなぜ殺される前に抵抗を見せないのか、ユダヤ人がなぜ強制収容所で殺されるとわかっていて抵抗を見せなかったのか。不思議に思ったことはないだろうか?

様々な外因的理由もあるかもしれないが、栄養不良であれ、睡眠の剥奪であれ、病気であれ、ヒトは一定レベルを超えて生理的に摩耗してしまうと、どれだけ不当であっても立ち向かうことができなくなるものなのだ。

自分自身、基本的には精神的にタフなほうで、うつになるようなタイプではないのだが、長年の病気で、寝込むほどの全身炎症状態が10年以上続いていたため、憔悴していた時期もあった。

おそらく、海馬が萎縮しきっていたと思っているが、いずれにしても器質的または生理学的な不調が持続すると、(休息がとれる短期的な不調であれば問題はない)、どんなに前向きな性格であろうと、根性があろうと太刀打ちできるものではない、ということは身にしみて感じている。

小まとめ 

アルツハイマー病患者の不安・恐怖は長引きやすいので、フォローアップにも気を配ろう。

呼吸法、ヨガ、炎症抑制の食事・サプリメントなどで副交感神経に働きかけることも重要

扁桃体が狂乱する前に

「relationship dementia」の画像検索結果

しかし、患者の記憶力がまだ残っているうちに、良好な関係を築いてしまっておけば、そのことを長期記憶してくれるだろう。

そして後に本人が少々嫌な感情を相手にもったとしても、長期記憶の好感情が打ち負かしてくれるかもしれない!と思っている。

アルハカの母がアルツハイマー病と診断された直後のまだ記憶力が残っている時に、父が母に対して非常に優しく接するようになったのだが(汗)そのことを今でも母は強烈に覚えていたりする。

そのため、記憶力が衰えた今でも、以前からの日常的な夫婦喧嘩はあっても、夫婦の関係がひどく険悪になることはないようだ。

「お父さんは優しくなったよねえ」と、今でもよくつぶやく。

これがもし、患者さんの記憶力がある程度低下した中期の頃になって、介護に関わったり、積極的に世話をしようとしても、そういったポジティブな長期記憶が形成されにくい。

そのため、そういったケースでは患者と介護者の人間関係が深刻になりやすいかもしれない。

進行がもっと進み扁桃体も海馬もほとんど機能しなくなれば、今度はそういった問題も起こらなくなるのかもしれないが…

介護の問題においても、先手で取り組むのか、後手にまわるのかが、後々大きな差となって現れるのかもしれない。

どのタイミングでアルツハイマー病患者と関わるか、ということは良好な介護を行っていく上で重要なポイントなのではないかと思っている。

まとめ 

介護者と患者は、早めに強いきずなを作っておこう!

扁桃体の役割は恐怖感情だけではない

「amygdala role」の画像検索結果

study.com/academy/lesson/the-amygdala-definition-role-function.html

扁桃体について少し調べてみたのだが、これが、なかなか奥が深い。

どうも、扁桃体は恐怖、覚醒の検出器 といった単純な話ではないようだ。

扁桃体の第一の反応は、危険な状況を察知するための恐怖感情、

第二の反応は、様々な人々との社会的関わりあいにおいて、幸せな表情に対して扁桃体の反応が起こる!

science.sciencemag.org/content/296/5576/2191.long

恐怖の表情による扁桃体活動は不注意によってが増加するが、幸福の表情による扁桃体の活動は注意を向けることで高まる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15627583

「focus smile alzheimer」の画像検索結果

空腹時に食べ物の写真を見ているほうが、食事を食べた後よりも扁桃体が活動している。

インセンティブによっても扁桃体は活性化される

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15341613

脳の言語処理活動が、感情反応(扁桃体の反応)を減少させるかもしれない!

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17576282

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18540747

どうやら、扁桃体も社会的な進化をする柔軟性があるようだ。

基本の役割は感情の揺れ動き、見えない恐怖への反応といったものだが、その他の状況への検出器としても適応しているようでもある。

超まとめ 

相手が注意を向けてしまうような笑顔で、認知症患者の扁桃体を活性化させよう!

ポジティブな扁桃体に作り変える

衝撃を受けた論文!

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2656883/

扁桃体が不快な刺激を検出してばかりいると、扁桃体の機能がそのことに特化されてしまう!

読書中に、扁桃体を刺激するような心地よい言葉によって活性が続けられると、

扁桃体が、

不快な感情や、興奮によって左右されない、

「ダイナミックな検出器」となる!

この研究から読み取れる重要なポイントは、

扁桃体が反応するイレギュラーな因子(笑顔、ポジティブワード、おそらく恋愛、感動も)を付け加えていくことで、本来の扁桃体を反応させる因子(不安や恐怖)の抑制が可能かもしれない!

わかりやすく言うと、扁桃体の悪評価優先システムを、好評価優先システムに変えることができるかもしれない!

「amygdala sensor smile」の画像検索結果

ポジティブ感情、ポジティブシンキングなどの重要性など、昔から心理学で語られていたし、それらに前頭前皮質や、報酬に関わる側坐核が関わっていることも知っていたが、、まさかそれらが扁桃体の機能レベルにまで影響を及ぼすとは驚きだ!

プラス思考、ポジティブ感情という言葉の流行が、なんとなく好きになれなかったのだが(汗)

特に扁桃体の障害を受けやすいアルツハイマー病患者にとっては、ポジティブ思考が、大きな防衛装置となりえるかもしれない、と見直し始めている。

超まとめ ポジティブな言葉に毎日触れて感動しよう

扁桃体を育てるには

前向きな本を読む

ポジティブな言葉が多く用いられている本を読むことは良いことだと思う。

おそらく研究が示唆するのは、ポジティブな言葉(特に形容詞)が散りばめられていて、読んでいる本人の心に響くような本だろう。

だから、ポジティブ思考のススメといったような自己啓発的な本ではなく、前向きな楽しい詩集だったり、ポジティブな言葉で埋まっている短編ものの小説、恋愛小説など、本人が楽しんだり感動できるようなものがいいのではないかと思う。

自発的に読むことも、扁桃体の活性度をあげる重要な要素である。

いいこと日記

アルハカ母は、この書き込み式「いいこと日記」をもう6年以上書いている。

日記に良いことだけを、数行書いていく日記。

わりと直感的に良いと思ってプレゼントしたのだが、振り返ってみれば、扁桃体の機能をポジティブなものにしていく必須要素(ポジティブワード、継続性、自発性)が多くつまったツールだ。

いいこと日記は扁桃体教育のみならず、科学的な証拠に基づいた幸福感を高める方法でもあり、おすすめ度に超をつけたい。

※患者本人だけでなく、介護者の方にもおすすめしたい。

ポジティブ・ブッククラブ

また、扁桃体の反応は視覚野、行動、恋愛感情とも強く結びついているため、(できれば恋人やパートナーと)散歩しながらポジティブな本の内容について話し合えば、最高の扁桃体教育となるかもしれない!

「book club walking」の画像検索結果

もっといろいろなことが考えられそうだが、とりあえずこれくらいで。

何かアイディアがあったら是非教えてください。

『アルツハイマー診断直後から行う周辺症状戦略』へのコメント

  1. 名前:musica yorozu 投稿日:2017/07/16(日) 22:57:07 ID:e68e56bba

    Bravo!

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