神経成長因子NGFを増やす (認知症・アルツハイマー)

大量の成長因子NGFの源は、ヘビの毒や男性の生殖器官に存在している。
これは遺伝子発現の奇妙な進化をあらわしているのかもしれない。
NGF発見によりノーベル賞を受賞した神経学者
リータ・レーヴィ=モンタルチーニ

神経成長因子 NGF

(覚え書き)

概略

NGF(nerve growth factor 神経成長因子)

神経成長因子NGFはBDNFと並んで、認知症患者、アルツハイマー病患者にとって重要な神経栄養因子のひとつ。

認知症、アルツハイマー病患者にとってのNGFの直接的な重要性は、NGFがニューロンの軸索の成長、維持し、また軸索をコーティングしているミエリン鞘を修復することにある。

※アルツハイマー病の直接的な障害の起因は、海馬のミエリン鞘が脱落しそれが広がっていくものという説がある。

NGFが作用する脳の前脳基底部は、アルツハイマー病患者の脳でミエリン鞘が脱落し激しく障害を受ける場所でもあるため、何か関連があるのではないかとされていた。

高齢者においても海馬のNGFは低下しているとされている。

BDNFとNGFの比較

NGFがBDNFに先立って発見されていて、NT-1と呼ばれていた。BDNFは次いでNT-2

NGFもBDNFと同様、神経細胞を生存させたり、神経突起を伸ばしたり、神経伝達物質の合成を促進したりと重要な役割をもつ。

またNGFは中枢神経だけでなく、末梢の感覚神経や交感神経の発達、増殖機能維持にも深く関わる。(BDNFにはない)

NGFが末梢において過剰にあると、知覚過敏、特に熱に敏感になる。

※NGFと結合し排出することで痛みを緩和させる抗体医薬(抗NGF抗体)があったりする。(大丈夫なのか?)

脳の主に前脳領域にNGF、BDNF、両方が作用しているが、NGFは末梢神経や免疫系にも働くといった感じ。

※そのため過剰なNGFは自己免疫を悪化させるかもしれない。

どちらも脳関門は通過しないため、静注しても脳へは届かない。

興味深い実験で、AD女性患者の脳に直接NGFを投与して、コリン作動の悪化を抑制した症例がある。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8117429

proNGFとNGFのアンバランス

「proNGF ngf」の画像検索結果

https://www.omicsonline.org/open-access/imbalance-of-the-nerve-growth-factor-and-its-precursor-implication-in-diabeticretinopathy-2155-9570-1000483.php?aid=62951

NGFの前駆体であるproNGFをNGFに変換ができないと機能不全のニューロンが産生される。

アルツハイマー病患者においては、このNGFへの変換能力に欠陥がある可能性がある。

NGF代謝の遺伝子治療を施した臨床試験で、アルツハイマー病患者の障害を受けていた細胞に回復が見られた。しかもその効果は治療後も10年続いた!

NGFはアルツハイマー病患者の皮質、皮質下で増加が見出されている。そのことからNGFの不足ではなく、NGFのシグナル伝達の調節不全、受容体の問題によりシナプスの障害が引き起こされている可能性もある。

糖尿病は、proNGFとNGFの比率のバランスを変化させる。

認知症・アルツハイマー病においては、NGFを増やすだけでなく、proNGFを減らしていくことが重要かもしれない。

(proNGFとNGFの比率を正常化させるというべきか)

※脳脊髄液内のproNGFは軽度認知障害を100とすると、aMCIで155%アルツハイマー病で170%増加。

NGF・アルツハイマー関連の研究

興味をひいたものをランダムに記載している。

NGFを直接脳内へ注入して、NGF受容体を刺激すると、血流が増加しエピソード記憶が改善させることが研究で示されている。

ニューロトロフィンシグナル伝達は、アルツハイマー病患者の(楔前部の)アミロイド毒性に対して、弾力性、回復力がある。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24529280

βアミロイドは、α7ニコチン性アセチルコリン受容体に対する作用を介して、コリン作動性機能不全を引き起こし、NGFシグナル伝達に影響を与える。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21145918

NGFはMMP9によって分解される。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26391047

ヒトアルツハイマー病患者の海馬および嗅内皮質におけるproNGFが、糖化および脂肪酸化の最終生成物によって段階的に改変されている可能性。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19893045

NGFは、バソプレシンの分泌を増加を介して、HPA軸を刺激する。

NGFは慢性炎症、脳損傷に対する炎症反応の一部かもしれない。だとすればやはりずっとNGFを活性化させることにも問題があるかもしれない。

NGFを増やす方法

運動

低強度のトレーニング
激しい運動

オリンピック選手のNGF血中濃度は平均よりも有意に高い。

ヨガ

一日20分で効果あり

https://www.cambridge.org/core/journals/international-psychogeriatrics/article/induction-of-salivary-nerve-growth-factor-by-yogic-breathing-a-randomized-controlled-trial/98983339B638744EC753BD235AA9831E

恋愛

NGFはコルチゾールを増加させ、(ACTHを介して)幸福感を誘発する可能性がある。

恋愛の初期のロマンチックな感情の強度とNGFには正の相関が確認されている。NGFは恋に陥った時の感情と関連しているかもしれない。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21701998

つまり恋愛をするとNGFが増える!

だが、通常はNGFとともに上昇するコルチゾールが、NGFを阻害するため長続きはしない。(コルチゾールは知られているように炎症ホルモンでもあるため、これ自体が持続するのは危険)

実際、12ヶ月以上恋愛感情が続く人たちでは、NGFは低下している。そういった人たちは、恋愛初期の大量のNGFによる神経可塑性、神経新生によって、永続的な記憶を形成したがために、長期の恋愛感情が保たれているのではないかという説がある。

「愛が勝つ!」というのは、生化学的には「NGFが勝つ!」なのかもしれない。(笑)

https://en.wikipedia.org/wiki/Nerve_growth_factor

NGFを増やすサプリメント

ヤマブシタケ(重要)

ヤマブシタケは、proNGFとNGFの比率を変化させる。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27350344

アセチル L カルニチン

低酸素症による細胞障害の誘発をアセチルLカルニチンが用量依存的に有意に弱める。NGFおよびチロシンキナーゼをアップレギュレートする。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18500755

PQQ

シクロオキシゲナーゼ活性化を介してNGFを増強

http://gazo.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/gakui/cgi-bin/gazo.cgi?no=212317

リチウム

ウアバインによってBDNF、NGF、GDNFの障害を受けたラットが、HDAC阻害効果をもつリチウムを用いた治療によって逆転。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25467060

バコパ・モンニエリ

ERK1 / 2、NF-κB経路を介して、NGFを増強

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23076629

その他

酪酸塩

ローズマリー

ケルセチン

イチョウ葉エキス

亜鉛

ビタミンD3

メラトニン

DHEA

ヒュペリジンA

明日葉

ヨヒンベ

クリシン

ロイヤルゼリー

レーマニア

※詳細はブログ記事 サプリメント総合リスト を参照いただきたい。

NGFを間接的に増やすサプリメント

緑茶 EGCG

NGFとproNGFの不均衡を緩和

ミルクシスル

DHA

ビタミンA

アルコール

ホスファチジルセリン

ゴツコラ

αGPC

ウリジン

コリン

フォルスコリン

ゲニステイン

サウナ、熱ショック

NGFを増やす医薬

セレブロリシン (Serebrolysine)

proNGFとNGF両方が増加、比率調整を行っている可能性。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23152192

イデベノン (Idebenone)
経口摂取によるNGF活性 イデベノンおよびプロペントフィリン

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9062669

アトルバスタチン (Atorvastatin)

シンバスタチンおよびアトルバスタチン、低用量、高用量の両方において、BDNF、VEGF、NGFの発現を有意に増加させた。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3589759/

チロシンニトロ化の阻害

セレギリン (Selegiline)

パーキンソン病治療薬 別名 デプレニル(Deprenyl)

セレギリンはNGF合成を増強し、興奮毒性および虚血性損傷から中枢神経系ニューロンを保護する。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8960860

セレギリンは、BDNF、NGF、NT3遺伝子発現を増強

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26221478

ヌーペプト(Noopept)
NGFスプレー

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19355851

プロペントフィリン propentofylline

アデノシン濃度を上昇させる。cAMPを分解するホスホジエステラーゼの抑制

アルツハイマー病患者、血管性認知症患者の痴呆症状を改善、進行を遅らせる。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9716243

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9298634

プロペントフィリンは聴覚刺激に対する脳の代謝応答を増強する。

http://www.jns-journal.com/article/S0022-510X(97)00217-7/fulltext

NGF合成促進化合物

カテコール化合物

レボドパ、カテキン、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン

キサンチン系誘導化合物、刺激薬 

フェネチリン

カフェイン、パラキサンチン、テオフィリン、テオブロミン

プロペントフィリン

1,4-ベンゾキノン類

ユビキノン-1、ビタミンK2

ヘリセノン 

ヤマブシタケ、今のところ他では見つかっていない。

レクチンの一種

ドクウツボ

https://ir.lib.shizuoka.ac.jp/bitstream/10297/2293/1/080610001.pdf

proNGFを抑制する薬

フルオキセチン

フルオキセチンはp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(p38-MAPK)の活性化を阻害し、pro-NGFの発現を有意に阻害した。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25366938

抑肝散 

抑肝散はNGFを増やし、proNGFを減少させる。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/144/Supplement/144_S1/_pdf

NGFの日内変動

NGFの日内変動は、光によって位相的に調節されている。

NGFは炎症反応、コルチゾールの増加ともつながっているため、NGF活性は概日リズムを考えて治療戦略を組み立てるべきかもしれない。

「NGF circadian rhythm」の画像検索結果

https://www.dovepress.com/nerve-growth-factor-brain-derived-neurotrophic-factor-and-the-chronobi-peer-reviewed-fulltext-article-CPT

NGF、BDNFとも視交叉上核において合成され、概日リズムの調節に関与している。

NGFはVIP合成を刺激し、VIPIニューロンに保護的に働く。

BDNFは深夜から朝にかけてピークを迎えるが、NGFは8時と、20時にピークを示す!

「ngf circadian」の画像検索結果

NGFもアセチルコリン同様、ただとにかく増やせ!とかではなく、メリハリが必要

光の刺激により脳内の経路が活性化され、高レベルのNGF増加に結びついている可能性が示されている。

結論

朝日を浴びよう!

参考サイト

https://en.wikipedia.org/wiki/Nerve_growth_factor

http://www.tmig.or.jp/J_TMIG/genome300/NGF.html

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26825093

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23095849

http://www.eurekaselect.com/140506/article

https://selfhacked.com/2016/03/27/all-about-nerve-growth-factor-and-50-ways-to-increase-it/